日本フィジェットスライダー協会 会報第1号 特集
副会長インタビュー
手の中の儀式
表紙 副会長の使用個体。赤い塗装の擦れは、三年の往復運動の記録である。
前書き
カチカチ、カチカチ。その小さな音が聞こえるとき、斉藤羽澄の思考はもっとも深く潜っている。
当協会副会長であり、別名義でAI画像・AI動画クリエイターとして活動する彼女は、磁石スライダーを握り、テクノのビートに乗りながら動画を編集する。その反復的な儀式に、現代のデジタル創作の本質が宿っている。
聞き手:日本フィジェットスライダー協会 事務局
01出会い
問フィジェットスライダーとの最初の出会いを教えてください。
三年前、会議の待ち時間でした。隣の席の方が滑らせた、カチ、という小さな音が、ずっと耳に残ったんです。もともと授業中にペン回しをするような人間で、手が何かをしていないと落ち着かない感覚は昔からありました。ハンドスピナーも試してみたけれど、ぐるぐる回る系はハマらなかった。でも、磁石をずらしてカチカチする系は「これだ」と思いました。
問実際に手に取ったときの感触は。
可愛くて、カチカチ言うし、思わず集めたくなりました。手に取った瞬間に「劇ハマリの予感」がして、その予感は正しかった(笑)。使い続けていくうちに、これはただのおもちゃじゃなくて、自分の仕事のリズムを作る道具になっていきました。
真っ黒のインクを水に溶かした様な感覚。それが、磁石をカチカチするときの感触です。
副会長 斉藤羽澄
02感覚と集中
問その感覚を、もう少し詳しく話してもらえますか。
じわっと広がっていく、あの滲み方です。視覚的なイメージが手の感触と結びついている感じがして、それが思考を落ち着かせてくれます。
カチカチという音と手の動きが、テクノのビートと混ざり合ったとき、自分の集中がもっとも深いところに達する気がします。フィジェットのリズム、音楽のビート、そして動画編集の作業。この三つが揃ったとき、思考が本当に潜っていける感覚があります。
問テクノ音楽との組み合わせというのは。
テクノの反復するループは、私にとっては脳のメトロノームみたいなものなんです。指先のリズムと、音楽のリズムが重なって、頭の中が静かに整っていく感覚があります。散漫にならずに、一点に集中し続けられる。好きな音楽でないと意味がないから、私の場合はテクノじゃないとダメですね。
03三年の実践
問もう三年、スライダーを仕事に取り入れているそうですね。
最初は半信半疑でした。でも使い続けていくうちに、スライダーがあるときとないときの差が、自分の中ではっきりしてきた。AIクリエイターの仕事は、ツールを使いながら膨大なイメージを頭の中で処理していく作業です。頭がいろんな方向に引っ張られやすい。そのとき、手でカチカチしていると、思考が散らばらずにいられるんです。
集中力を「養う」という感覚です。一朝一夕ではなくて、毎日の積み重ねで、自分のリズムが育っていく。今はスライダーが、自分の制作環境の一部になっています。
カチカチ、テクノ、動画編集。この三つが揃ったとき、思考がもっとも深く潜っていける。
副会長 斉藤羽澄
04素材と美学
問素材へのこだわりもあるとか。
磁石系は好きだけど、丸みがあるともっと良いと思っていました。手に馴染む形というか、角張っていると少し硬い感じがする。それで、天然石のフィジェットのことを考えるようになりました。石が持つ独特の温度感と重さ、手のひらに収まる丸み。デジタルの仕事をしているからこそ、手の中にアナログな質感があることが、バランスを取ってくれる気がします。
問集めたくなる気持ちもあると。
集めたくなるんですよ(笑)。それぞれ触り心地が違うし、カチカチの音も微妙に違う。自分に合うものを探していく過程も楽しい。機能性とかわいさが両立しているものが多くて、仕事道具なのにちゃんと「好き」と思えるものを選べるのが良いんだと思います。
後記
斉藤羽澄の話には、一貫した主題がある。それはリズムだ。手の動き、音楽のビート、制作の流れ。そのすべてが同じ周波数に揃ったとき、彼女の創造性はもっとも自由になる。カチカチという小さな音は、その同調の合図である。
デジタルとアナログの境界線で仕事をする者にとって、手の中の磁石は、思考を深海へと導く錨なのかもしれない。
- 斉藤羽澄
- 日本フィジェットスライダー協会 副会長。AI画像・AI動画クリエイター。Midjourney、niji・journey、Luma AI、Suno、ChatGPT、Canva AI、Photoshop を用いた制作を行う。
- 別名義での作品は、XとInstagramを合わせて5万人を超える方々に届けられている。なお、斉藤羽澄名義のXアカウントのフォロワーは、現在2名。当協会は、この数字を伸ばすことを当面の目標といたします。
本インタビューの内容は、副会長個人の感想です。当協会は、スライダーの効能を断言いたしません(会則第8条)。